さとみの妄想伝説
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相棒 ウソ感想文(感想文に見せかけた妄想小説です)
相棒 シーズン9 第11話 死んだはずの男(ハッピーエンド)

7年前まで共に過ごした家族のことをきれいさっぱり忘れろなんて無理難題をつきつけるのは、愛じゃない。 三津の心の奥に、元妻や娘のことを思う気持ちが潜んでいることを認め、受け入れていれば、 レストランを覗いているのを見たくらいで殺意を抱くようなことはなかったはずだ。
尊がそう述べると、右京の体から煙が立ちのぼった。
「よく言った」
煙はやがてあたり一面に満ちてゆき、煙が晴れると右京の姿は別の男の姿に変化していた。
その姿に尊は見覚えがあった。
「お、おまえ……湊哲郎!」
それは春樹のかつての恋人、湊哲郎だった。

尊にとってはカレの元カレだ。
元カレと言ってもケンカ別れしたわけじゃない。死別だ。
「お前は死んだはずじゃないのか?生きていたのか?」
「死んだよ」
そんなあっさり言うなよ、現にそこでピンピンして動いているじゃないか、さてはこれは悪い夢か? それならとっと覚めろ!覚めろ!と尊はいろいろ考えた。

「そんなに驚くなよ。今日は俺の命日。一年中で一番霊力が上がる日なんだからさ」
「覚めろ!悪夢よ覚めろ!」
尊は自分の顔をパンパンとたたいた。
「確かに俺は死んだ。しかし俺は心配なんだ。大河内さんのことが」
「さーめーろー!悪夢め!」
尊は自分の頬をつねった。
「俺が死んだ後、大河内さんは新しい恋人を作らず、ずっと一人だった。そこへ神戸、お前が現れた。 俺はちょっと期待した。もしかしたらこいつは大河内さんを幸せにできる男かも、と」
「悪夢覚めろ!」
「でも気になった。大河内さんの心の中の俺との思い出に対して、お前が嫉妬しているようだったから」
「覚め!」
「そこでお前の心を試させてもらうことにした。お前に幻覚を見せて、どんな答えを出すか試したんだよ」
「覚めろ!」
「聞けよ!」
湊は尊につかみかかった。

尊は怒りが湧いてきた。
「勝手なこと言うなよ!何が『大河内さんを幸せにできるか』だよ!お前が一番悲しませたじゃないか! この不倫亭主!」
「それを言われると……」
尊の剣幕に、湊はタジタジだ。
「それに!嫉妬しちゃ悪いのか!好きな人が昔の男をまだ愛してるなんて、気分いいわけないだろう! この亡霊!」
「でもお前は選んだね」
湊はほほえんだ。
「選んだ?何を?」
尊は睨んだ。湊は宙に浮かび上がった。
「神戸は大河内さんを受け入れた。いまだに俺との思い出を忘れずにいる大河内さんを受け入れて愛することを選んだ。 だから神戸、お前に大河内さんをまかせる。必ず幸せにしてあげてくれ。頼んだぞ」
湊がそう言うと、辺りは光に包まれた。あまりのまぶしさに、尊は目を閉じた。

気がつくと、尊は墓地に突っ立っていた。
目の前には『湊家代々の墓』があった。尊は思い出した。
「そうだ。確か俺は……」

その日、朝から尊は一人で町をブラブラしていた。
すると春樹の姿を見つけた。
春樹は尊に気づかずタクシーに乗って去ってしまった。尊は後を追った。
たどり着いたのが、この『湊家代々の墓』だった。
春樹は尊に気づかないまま墓参りを済ませて、帰ってゆき、尊は怒りにうちふるえた。
――いまだに元カレの墓参りに来ているのか――

「きっと俺の怒りの感情が、湊の亡霊を引き寄せちまったんだな」
一人でつぶやいた。
尊は力強く踏み出し、自宅へと戻って行った。春樹を愛するために。

ハッピーエンド

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